マレーシアのペナン島は、東南アジア屈指のグルメ天国として世界中の食通から愛されています。
マレー系、中華系、インド系の文化が融合した独特の料理文化は、一度味わうと忘れられない魅力があります。
本記事は、マレーシアのペナン島に1995年から住む私が、地元の人に人気のおいしいマレーシア料理をお伝えするシリーズです。
今回は、現地の人が愛してやまない究極のソウルフード「チキンライス」の魅力をご紹介します。
日本のケチャップ味のチキンライスとはまったく異なる、中国海南省から伝わった伝統の味わいを、現地在住者の視点から詳しく解説いたします。
多くのお店でお昼時に行列ができるほど人気のこの料理の秘密を、一緒に探ってみましょう。
【マレーシアのチキンライス】とは
マレーシアのチキンライスとは、中国海南省からの移民が東南アジアに広めた「海南鶏飯」が起源の料理で、マレー系のお店では「Nasi Ayam(ナシ アヤム)」と呼ばれています。
民族や地域ごとに独自の発展を遂げ、マラッカでは丸く握られたチキンライスボールが名物として親しまれています。興味深いのは、シンガポールとマレーシアが海南鶏飯の起源をめぐって長年論争を続けており、両国とも自国が発祥の地だと主張していることです。
現地では「マレーシア人のお昼の定番」として、お昼時に行列ができるお店も珍しくないほど愛され続けている究極のソウルフードです。
チキンライスの基本情報
項目 | 内容 |
料理名(現地語) | 海南鶏飯(Hainanese Chicken Rice) |
発祥・系統 | 海南省移民の伝統料理 |
主な食材 | 鶏肉、ジャスミンライス、生姜、ニンニク |
価格帯 | RM5~8(約175~280円) |
辛さレベル | ★☆☆☆☆(5段階) |
日本人向け度 | ★★★★☆(5段階) |
※価格は2025年時点の目安です。為替レートの変動により日本円換算額は変わります(上記は1RM=35円で計算)
チキンライスの味の特徴
マレーシアのチキンライスは、シンプルさの中に深い旨みが詰まった料理です。チキンスープで炊いたご飯は、鶏の出汁がしっかりと染み込み、ほんのりとした塩味とニンニクの香りが食欲をそそります。蒸しチキンはしっとりと柔らかく、鶏本来の味わいを存分に楽しめます。
ローストチキンを選んだ場合は、皮がパリッとして香ばしく、蒸しチキンとは違った食感が楽しめます。付け合わせのきゅうりは口の中をさっぱりとさせ、あっさりとしたスープが全体の味をまとめます。
日本から来た友達を「チキンライス食べに行こう」と連れて行った時、出てきた料理を見て「え、これがチキンライス?」と驚いていました。
日本人が想像するケチャップで炒めた赤いチキンライスとはまったく異なる料理だったからです。でも一口食べて「これはこれでおいしい!」と感動していました。
決め手となるのは、ガーリックチリソースです。ニンニクの効いた辛みのあるソースが、淡白な鶏肉とご飯に絶妙なアクセントを加えます。地元の人は「ガーリックチリの味でお店を選ぶ」ほど、小さな小皿にこだわりがあります。
マレーシアのチキンライスは、日本のケチャップ味とはまったく異なる、現地ならではの味わい深い料理なのです。
チキンライスの注文時のポイント
- 現地語での注文方法:「One Chicken Rice」
- おすすめカスタマイズ:「Half steam, half roast」(半分ずつ)、「Separate, please」(別盛り)
- 注意点:ガーリックチリソースは辛めなので少量ずつ試す
現地語での注文方法は「One Chicken Rice」で十分通じます。普通に頼むと、ご飯の上にチキンが乗った状態で出てきます。ご飯とチキンを別々に食べたい場合は「Separate、 please」と伝えましょう。ただし、この場合はチキンの量が多くなるため、少し値段が高くなります。
チキンの種類を選ぶ時は「Steam Chicken(蒸しチキン)」または「Roast Chicken(ローストチキン)」と伝えます。おすすめカスタマイズとして、半分ずつ食べ比べたい場合は「Half steam、 half roast」と注文できます。
ガーリックチリソースについては、足りなくなっても心配いりません。お代わりが欲しい時は、自分で小皿を持ってカウンターに行けばもらえます。もちろん無料です。地元の人も当たり前のようにお代わりをもらっているので、遠慮せずに行きましょう。
注意点として、ガーリックチリソースは思っているより辛い場合があります。辛いものが苦手な方は少しずつ試してから量を調整することをおすすめします。
【チキンライス】が食べられるペナンのおすすめ店舗
マレーシアにはたくさんのチキンライスのお店があります。ペナンも同様で、チキンライスの名店が点在しています。おもしろいのは、とくに「ここがおいしい」というより、みんなが自分の行きつけのお店を持っていることです。
以前渋滞ができるほど人気だったチキンライスのお店にFatty Loh Chicken Riceがありましたが、店舗数を増やしてから味が落ちて行かなくなりました。今はほとんどの店舗を閉めて、Jalan Fettes Tanjung Bungahに1店残っているだけです。マレーシアミシュランガイドに選ばれたそうですが、うちは以前より味が落ちたと感じ、全然行かなくなってしまいました。
味の好みは人それぞれですし、お店の雰囲気や立地、価格なども選ぶ基準になります。地元の人たちは「あそこのガーリックチリが好き」「あの店のご飯が一番おいしい」といった具合に、それぞれのこだわりポイントでお店を選んでいます。
ここでは、うちが最近行くお店を2つ紹介します。
【Sin Nam Huat Roasted Chicken And Duck Rice】(Fettes Park)
項目 | 詳細 |
店名 | Sin Nam Huat Roasted Chicken And Duck Rice (新南发) |
住所 | No 42, Jalan Tanjong Tokong, Jalan Fettes, 11200 Tanjung Bungah, Penang |
営業時間 | 10:00~17:00 |
定休日 | なし |
アクセス | ガーニードライブエリアから車で約10分 |
特徴 | 1968年創業の老舗チェーン店。チキンライスだけでなく、叉焼や焼肉、焼鸭も人気 |
新南发(Sin Nam Huat)は1968年創業の歴史あるチキンライス店で、Air Itamに本店を構える老舗チェーンです。2025年9月時点で10店舗ほど展開しており、数年前にFettes Park店ができました。
チキンライスだけでなく、チャーシュー、ローストポーク、ローストダックなども注文できます。子供は、甘いたれのついたチャーチューやコリコリした口当たりのローストポークが大好きです。
本店は行ったことがありませんが、各地にあるチェーン店はどこも列ができていて、ぺナン島を代表するチキンライス店の地位を確立しています。
【Goh Thew Chik Hainan Chicken Rice】
項目 | 詳細 |
店名 | Goh Thew Chik Hainan Chicken Rice |
住所 | 338, Lbh Chulia, George Town, 10200 George Town, Penang |
営業時間 | 10:00~16::00 |
定休日 | 水曜日 |
アクセス | ジョージタウンの中心部、チュリア通り(バックパッカー通り)。ペナン島の主要観光エリア内で徒歩でアクセス可能 |
特徴 | 70年以上の歴史を持つ老舗店。ミシュランガイド2024掲載の名店で昔ながらのコピティアム |
70年以上の歴史を誇るGoh Thew Chik Hainan Chicken Riceは、ジョージタウンの名物通りであるチュリア通りに店を構える老舗チキンライス店です。
チュリア通りは「バックパッカー通り」とも呼ばれ、ホステルや安宿、ホッカーセンター、両替屋、ツアー会社が立ち並ぶ賑やかなエリアの中心にあります。
店内は、主人が大好きな昔ながらのコピティアム(喫茶店)の雰囲気。
自家製のピリ辛チリソースが、シルキーでジューシーな鶏肉の旨みを引き立てます。ミシュランガイド2024にも掲載された実力店で、味が良く値段も手頃なため、地元の人から観光客まで幅広く愛されています。
ランチ時は特に混雑するため、まず席を確保してから注文するのがおすすめです。
【チキンライス】を食べる時のポイント
マレーシアのチキンライスを存分に楽しむために、知っておきたい食べ方のコツや注意点をご紹介します。
現地の人の食べ方を真似すれば、より美味しく味わえるでしょう。子連れの方にも安心して楽しんでいただけるよう、注意すべき点もまとめました。
【チキンライス】を楽しむコツ
- メニューの組み合わせを工夫する
- 盛り付け方で味わいを変える
- 美味しいチリソースのお店を見つける
チキンだけでは物足りない場合は、チャーシューやローストポークを組み合わせて注文すると飽きずに楽しめます。さらにもやし炒めなどの副菜を追加すれば、栄養バランスも良くなり満足度がアップします。
盛り付け方によっても味わいが変わります。ご飯の上にチキンを乗せてもらうと、チキンの旨みがご飯に染み込んで一体感のある味になります。
一方、別のお皿にしてもらえば、チキンとご飯それぞれの味をはっきりと楽しめるでしょう。
地元の人は「ガーリックチリの味でお店を選ぶ」ほど、このソースにこだわりがあります。滞在中に複数のお店を試してみて、自分好みの味を見つけるのもチキンライス巡りの楽しみのひとつです。
【チキンライス】の注意点
- 野菜不足に注意
- 持ち帰り時の注意
- 料金に関する注意
チキンライスは基本的にご飯、チキン、少量のキュウリのみです。副菜が欲しい場合は別途注文が必要です。
ほとんどのお店で、スープが付いてきます。ただし、持ち帰りでは「スープも欲しい」と言わないと、つけてくれないお店があります。持ち帰りの場合は、事前にスープがあるか確認しましょう。
また、ご飯とチキンを別々のお皿にすると、チキンの量が増えるため料金が高くなる場合が多いです。気になる方はこちらも注文時に確認したほうがいいでしょう。
子連れ向け情報
- チリは結構辛い
- チリソースのこぼれている場合がある
- チキンには骨が付いている場合がある
一緒についてくるガーリックチリソースは、見た目以上に辛いものです。現地の子供は小さい頃から慣れ親しんでいますが、日本人の子供の場合は無理なことが多いでしょう。
試させる場合は、まず少量で辛さを確認してから量を調整した方が安心です。
ご飯にチリの小皿が乗っているお店では、運ぶ時にチリソースがご飯にこぼれている場合があります。
うっかりチリが付いた部分を子供に食べさせてしまわないよう、ご飯を取り分ける際は注意深く確認してください。
チキンには骨が付いている場合が多いため、小さなお子様には事前に骨を丁寧に取り除いてから食べさせるようにしましょう。
上記さえ気を付ければ、チキンライスは日本人の口に合いやすく、子供でも楽しめるマレーシア料理です。
まとめ
この記事では、マレーシアの国民的ランチメニュー「チキンライス」を解説してきました。
現地での楽しみ方のポイントは、盛り付け方による味の変化や各店自慢のごはんとガーリックチリソースの違いを楽しむことです。
【チキンライス】の注意点や子連れ向け情報で紹介した内容に気を付ければ、チキンライスは日本人の口に合いやすく、子供でも楽しめる料理といえます。
ペナンを訪れた際は、ホテルの周りでチキンライスに行列のできるお店を見つけてみてください。